日常ブログ[美術コース]

こんにちは!

美術デザインコースでは、長期休みに自宅課題として1.2年生が同じ内容のデッサン課題を行っています。提出されたデッサンは学年やクラスを分けずに採点され、優秀作品は校内に掲示されます。

 

今回の課題は「靴が任意の状況に置かれていることを想定し描きなさい」でした。どうやら課題文が難しかったようだったので、簡単に解説しましょう。

 

まず「靴が」と書いているので、モチーフのメインが「靴」であることはすぐ断定できますね。そして靴に対してのそれ以外の要素は特に提示していないことを考えると、「モチーフは靴であれば数、種類などは問わない」と読み取ることができます。

問題はここからです。「任意の状況に置かれていることを想定し」とわざわざ書いているのにほぼ半数の生徒が「何も想定していない」デッサンを描いてきました。「任意の状況」とは「自分で好きに決めた場所」ということです。「置かれていることを想定し」とは「そこに置いてあるように」です。

つまり今回の課題文をとても噛み砕いて書き直すと「モチーフは数、種類などは問わない靴です。そして、その靴を自分で好きに決めた場所に置いてあるようにデッサンしない」となります。となればシンプルに靴を置いてその空間ごと描けば正解。ですね。

 

難しかったかもしれませんが、このような課題文で実際に美大などでの試験は行われます。「自画像を描きなさい」などのように簡単に読み取れる課題文もあれば、内容を汲み取り結果的に何を求められているかを推測する力が試されるような、今回のような課題も平気で大学入試などでは課されます。今回で言えば、「靴と空間」とか「靴とそれ以外の何か」との関係性をどれだけ表現できるか見たいんだなぁ。と思わなければならないということですね。

 

「ただの床に置かれた靴」というのも厳密には課題違反ではないものの、出題意図をよみとり答えようとしていることも大きな評価対象として採点が行われました。

 

それでは前置きが長くなりましたが優秀作品と講評に参りましょう!

 

 

 


 

1年生作品

 構図もよく自然なタッチでモチーフ同士の空間を上手く引き出せましたね!風通しの良い心地よいデッサンです。台奥のアウトライン付近の単調さや、植木鉢の受けの部分の見え方に少し違和感がありますね。そこまで集中しきれれば空間がさらに広がりを見せたと思います。ともあれ今回の課題で唯一の90点台の作品でした!おめでとうございます!(佐藤)

 

 

 


 

1年生作品

 非常に丁寧で狂いも少なく綺麗なデッサンです!教科書通り!といった感じの減点要素の少ない洗練された印象ですね。加点要素を増やしていく考えもここからは大事になっていきますね。欲というやつです。このデッサンでいうとパンチ力に欠ける点が一つ。もう一つは課題文をもう少しだけ深読みしたかった点ですね。綺麗なんですが少しそれらで守りに入った印象にも取られてしまうので、今後の意識として頭の片隅に置いておいてほしいです。(佐藤)

 

 


 

2年生作品

 靴と任意の状況の設定に、美術デザインコースの生徒であることを暗示するようなモチーフを配置する工夫が読み取れます。絵画の手法として、モチーフを特定の誰かや何かを暗示する記号として用いる事は良くあるので、今回の課題に対して大人っぽく回答できたと思います。画面構成としては明暗の配置が中央に平行に集まり、縦への空間の広がりが欠けて見えるので、背景に壁を描いたり、暗さをおく等の目線の誘導もあると尚良かったです。靴の描写ももう少し詳細に見たいところですね!(山本)

 


 

1年生作品

 気品の漂うデッサンですね。ヒールを選んだあたりに普段から美意識を持って物を観察している様子が伝わって来ます。靴は細かい装飾まで丁寧に描写されていますが、背景の布の質感や状況設定はもう少しドラマティックに演出しきっても良かったのかもしれません。実際にその場を作れると良かったですが、描き方が少し消極的に見えます。メインとなるモチーフ以外の要素をうまく使って、主役を引き立たせる効果を作りだしていければさらに良い作品になったと思います。(山本)

 

 


 

1年生作品

 課題に対しての答え方としてはやや素直すぎるくらいですが、意図的にシワを作った紙を敷きそれを描ききることで場の緊張感を作り出しているため、画面としては消極的な印象はなくむしろ積極性さえ感じます。そして描き込みも含めて色味や質感の対比がよく効いています。まだ背景との空間的なバランスなどが中途半端で画面としてどう見せるかといった部分の意識が見えないのは経験を考えるとまだ致し方ありませんが可能性を感じる良いデッサンでした。(河邊)

 

 


 

2年生作品

課題に対しての反応という視点で見た場合、個人的に一番評価したい作品です。周りと比較しても選んだ状況の面白さが際立ちました。折れ曲がった靴の描写は実際に靴を曲げた状況を作って描いたと思えるリアリティーを感じます。選んだ場面やシンプルな切り取り方は良いと思いますが、なぜか一見して状況が見えづらくこの緊張感を伝えきれていない印象も受けました。様々な要因があるかもしれませんが、この場合は壁の奥行き面などの見え方は限りなく左右対称にするなどしてよりシンプルに見せたほうが緊張感が伝わりやすかった気がするのと、靴と壁の関係や壁の抵抗感などはややリアリティーに欠け曖昧さが残る部分などが惜しいと感じました。(河邊)

 

 


 

2年生作品

モチーフの位置関係や奥行きを意識した構図はいいですが、手前も奥も見せ方が似ており、距離感が弱くなってしまった点が残念です。少しかたさが気になるものの細部まで質感を追った描写は好印象でした。観察した情報を表現することも大事ですが、画面を作る上での雰囲気や空間といった、作品としての魅力を加えられるよう意識できるといいですね。(野口)

 

 


 

1年生作品

鉛筆の調子がきれいに乗せられるようになってきましたね!スニーカーのかたちもよくとれています。課題文の「任意の場所」という部分への反応が薄く、靴だけが描かれているのが非常に惜しいところです。今回の構図では、モチーフ同士が重なり合い、靴ひもで動きを出すなど工夫はされていると思うので、それによって生み出された奥につながる抜けた空間を心地よく感じさせられればさらに良かったのではないでしょうか。影をもう少し丁寧に追いかけたり、暗い部分を押さえたりすることで関係性も見やすくなると思います。(光廣)

 

 


 

 

 

お疲れ様でした。今回は一年生の健闘も見られました!!

2年生は学内コンクールは最後になりますね。ここで得た課題を進路に生かして欲しいと思います。